「需給が重い」は永久欠格ではなかった
投資の記録を公開していると、どうしても当たった話を書きたいところですが、この記事は反省を内容とするものです。
「この銘柄を早めに見つけられた」
「予想どおり上昇した」
「分析がうまく機能した」
こうした成功例は書いていて気持ちがいいですし、読者にも伝わりやすいものです。
ただ、私が投資の型を少しずつ身につけられていると実感したのは、むしろ銘柄を外したときでした。
なぜ外したのか。
どの判断が間違っていたのか。
次から何を変えるべきなのか。
そこまで分解できたとき、失敗が単なる後悔ではなく、次の判断材料に変わりました。
今回は、私が「触らない」と判定した銘柄が、その後約41%上昇した事例を振り返ります。
なお、私の分析は、証券会社出身のYouTuber・Sho氏が公開しているフレームワークを参考にしています。
判断する順序は、基本的に次のとおりです。
地合い → 需給 → ファンダメンタルズ → テクニカル
複数の指標が同じ方向を示しているかを確認し、候補が複数ある場合は、消去法で条件の悪い銘柄を外していきます。
今回の記事は、この型を自分なりに使った結果、どこで間違えたのかを整理した記録です。
特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
6月26日、私はA社を「触らない」と判定した
対象は、ソフトウェア関連の一銘柄です。
ここではA社とします。
当時の株価は617円でした。
私が注目したのは、主に需給とテクニカルです。
A社の信用倍率は4.63倍の買い長でした。ピーク時には30倍を超えており、信用買いがかなり積み上がっていました。
信用買い残は1,200万株を超えていました。
信用買い残が多い銘柄では、株価が上がると「含み損が減ったところで売りたい」という戻り売りが出やすくなります。
逆に株価が下がれば、損失拡大に耐えられなくなった投資家の投げ売りが出る可能性があります。
つまり、上値は重く、下値も不安定になりやすい状態です。
加えて、テクニカルも強い形には見えませんでした。
株価は一目均衡表の雲の下。
パラボリックは陰転。
MACDはゼロラインの下でデッドクロス。
私には、下向きの流れが続いているように見えました。

信用買い残も多いし、チャートも弱い。これは無理に触らなくていい銘柄ですよね

現時点の条件だけを見れば、慎重になる判断は理解できます。ただし、“今は買いにくい”と“今後も上がらない”は別の話ですよ
このときの私は、その違いを十分に意識できていませんでした。
Sho氏がよく警戒している「値ごろ感だけの逆張り」に見えたこともあり、私はA社を候補から消去しました。
同じような理由で、貸借倍率18.93倍と極端な買い長だった鉄鋼関連のB社も外していました。
1カ月後、617円は868.5円になった
ところが約1カ月後、A社の株価は868.5円まで上昇していました。
617円から868.5円です。
上昇率は、約41%でした。
私が「需給が重い」「上値が重そうだ」と判断して外した後に、大きく上昇したことになります。
しかも、同じ時期にSho氏はA社について、バンドウォークが発生しており、非常に強い状態だと評価していました。
出遅れていた銘柄が上抜けていく相場環境の恩恵を受けている、という見方です。
私が外したB社についても、強い上昇トレンドが続いており、バンドウォークの終了サインが出るまでは保有するという考え方が示されていました。
同じフレームワークを参考にしていたにもかかわらず、私は正反対の結論を出していたのです。

同じ型を使っているはずなのに、どうしてここまで判断が違ったんでしょうか
【私】
「」

型そのものではなく、型を適用する順序と、数字の意味づけに問題があった可能性がありますね
単に「相場は難しい」で終わらせることもできます。
しかし、それでは次に同じことが起きても、また同じ間違いを繰り返します。
そこで、外した原因を3つに分けて考えました。
原因1:株価を動かす「触媒」を織り込めていなかった
A社は7月中旬、四半期決算と同時に、資本配分方針の変更と期末配当予想の修正を発表しました。
簡単にいえば、無配だった企業が配当を開始したということです。
これは、株主層を変える可能性があります。
無配の企業には興味を示さなかった投資家でも、配当が出るようになれば投資対象として検討するかもしれません。
配当目的の新しい買い需要が入れば、それまで重荷に見えていた信用買い残が吸収される可能性もあります。
私は、信用倍率や信用買い残の数字を、固定された悪材料のように扱っていました。
しかし実際には、需給は変化します。
決算、増配、自社株買い、経営方針の変更など、新しい材料が出れば、買い手の顔ぶれも変わります。
つまり、「需給が重い」は、その銘柄に永久に付いて回る欠点ではありません。
あくまで、その時点での状態です。

需給は一時点ではなく、未来を見据えて線として見る必要があります。
今の数字だけでなく、何が次の買い手を呼び込むかを見るのです
この視点が、当時の私には不足していました。
原因2:買い残の減少を悪材料としてしか見ていなかった
A社を判定する直前、信用買い残は前週比で約400万株減少していました。
私はこれを、
「信用買いの投げ売りが続いている」
「まだ下落圧力が残っている」
と読みました。
この解釈自体が、常に間違いというわけではありません。
信用買い残が急減する場面では、実際に損切りや投げ売りが発生していることもあります。
ただし、別の見方もできます。
信用買い残が減るということは、将来の戻り売り候補が減っているということでもあります。
つまり、需給の重石が少しずつ外れている可能性があります。
実際、私は別の金融株では、信用倍率が15倍から8倍へ低下したことを「需給改善」と評価していました。
A社では悪材料と判断し、別の銘柄では改善材料と判断していたのです。
同じようなデータを、銘柄によって逆に解釈していました。
これは、判定基準が統一されていなかったということです。
買い残が減ったときは、単純に良い・悪いと決めつけるのではなく、少なくとも次の点を確認する必要があります。
株価が下落しながら減っているのか。
株価が底堅く推移するなかで減っているのか。
出来高は増えているのか。
新しい買い手が入っているのか。
減少が一時的なのか、継続的なのか。
数字そのものよりも、数字が置かれている状況を見る必要があります。
原因3:地合いより需給を優先してしまった
今回の最大の原因は、判断の階層を逆に使っていたことでした。
Sho氏の型では、最初に見るのは地合いです。
その次に需給を確認します。
しかし私は、実際の運用では信用倍率を最優先の消去装置として使っていました。
信用倍率が高い。
信用買い残が多い。
だから候補から外す。
このように、需給だけで機械的に判断していたのです。
ところが、この1カ月に起きていたのは、個別銘柄の事情だけではありませんでした。
それまで資金が集中していたAI・半導体関連から、バリュー株や出遅れ銘柄へと資金が移動していました。
いわゆるセクターローテーションです。
相場全体の資金の流れが変われば、それまで買われていなかった銘柄にも資金が入ります。
その買いの勢いが強ければ、信用買い残という個別の重石を上回ることがあります。
以前、私は逆の事例を見たことがありました。
個別の需給では踏み上げが期待できそうだった銘柄が、セクター全体の売りに巻き込まれて2桁下落したケースです。
そのとき私は、
「個別の需給ボーナスも、セクターの流れには勝てない」
と記録していました。
今回は、その逆でした。
個別の需給の悪さも、上向きのセクターローテーションには勝てなかったのです。

需給を重視しすぎて、もっと大きな資金の流れを見落としていたんですね

そうですね。需給は重要ですが、地合いの下にある判断材料です。
順番を逆にすると、型を使っているようで別の分析になってしまいます。
型の順番を暗記していても、実際の判断では、自分が見慣れた指標を優先してしまう。
これは今回の大きな反省点でした。
運用ルールを「消去」から「監視」に変えた
今回の失敗を受けて、私は運用ルールを2つ修正しました。
消去法は、同じ時点の候補比較にだけ使う
消去法は、複数の候補から、その時点でより条件の良い銘柄を選ぶための方法です。
A社とC社があり、C社のほうが地合い、需給、テクニカルの重なりが良いなら、C社を優先する。
これは合理的です。
しかし、
「A社は需給が悪いから、今後もずっと対象外」
と判断するのは行き過ぎでした。
消去法で外した銘柄は、永久除外ではありません。
その時点では買わないだけです。
今後は、候補から外した銘柄を「除外リスト」ではなく「監視リスト」に残すことにしました。
需給が重い銘柄は「触媒待ち」として見る
需給が重い銘柄は、確かに上値が重くなりやすいです。
ただし、重石が外れ始めたときには、その反動で大きく上昇する可能性もあります。
そこで、今後は次の2つをセットで監視します。
一つ目は、反転のきっかけになる触媒です。
決算サプライズ、増配、配当開始、自社株買い、資本配分方針の変更、大株主の売却終了などが該当します。
二つ目は、信用買い残の減少トレンドです。
買い残が一度減っただけでなく、継続的に整理されているかを確認します。
そこに地合いやセクターの追い風が重なれば、以前は重かった銘柄が、有力な候補に変わる可能性があります。
ただし、注意も必要です。
「買い残が多いから、反発したときに大きく上がる」と安易に考えるのも危険です。
触媒が出なければ、重い需給がそのまま株価の上値を抑え続けることもあります。
大切なのは、需給の悪さを無視することではなく、変化の兆候を確認することです。
型の価値は、必ず当てることではない
今回、私はA社を外し、その後の41%上昇を取り逃しました。
結果だけを見れば、判断は外れています。
ただし、この失敗から何も得られなかったわけではありません。
原因を次の3つに分解できました。
触媒を織り込めていなかったこと。
買い残減少の解釈が統一されていなかったこと。
地合いより需給を優先してしまったこと。
原因を分解できたからこそ、運用ルールを書き換えることができました。
フレームワークの価値は、毎回正解を出すことではないと思います。
相場では、どれだけ分析しても外れることがあります。
それでも、判断の手順が明確であれば、
どこまでは正しかったのか。
どこで読み違えたのか。
次に何を修正するべきか。
を振り返ることができます。
何となく買い、何となく外しただけでは、結果が良くても悪くても再現性がありません。
一方で、型に沿って判断していれば、失敗からもルールを更新できます。
そして今回、もう一つ気づいたことがあります。
私はSho氏の型を使っているつもりでした。
しかし実際には、自分が重視しやすい信用倍率を先に見て、型の順番を歪めていました。
型を知っていることと、型どおりに使えていることは別です。
今回の41%上昇は、その違いを強く実感させられた事例でした。
まとめ
今回の失敗から学んだのは、需給が重い銘柄を安易に買うべきだ、ということではありません。
そうではなく、需給の悪さを固定的な評価にしてはいけないということです。
需給は、新しい材料や買い手の変化によって改善します。
また、個別銘柄の需給よりも、相場全体やセクターの資金移動が大きな影響を与えることもあります。
今後は、消去法で外した銘柄も監視リストに残し、次の変化を確認します。
地合いが変わったか。
触媒が出たか。
信用買い残が整理されているか。
テクニカルが上向きに変わったか。
「一度外したから、もう見ない」ではなく、条件が変われば評価も変える。
今回の失敗は、その当たり前を実際の相場から教えられた出来事でした。
※本記事は、筆者自身の投資判断の過程を記録したものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。分析の枠組みは、Sho氏が公開しているフレームワークを参考にしています。記載した株価や信用残などの数値は、各分析時点のものです。最終的な投資判断は、ご自身の責任で行ってください。

コメント